斌徳の弁ー1965年発行の「斌徳」二号より
礼は徳の大本と云う事がある。
礼儀を守る事が道徳を守る第一歩であり徳を身に着ける基になると云う事であろう。
剣道は礼に始まり礼に終ると云はれている。稽古の始めと終りに敬礼を正しくすると云う事ではなく稽古中は勿論日常も亦節度ある言動が身に着く様心掛くべきであると云う事であろう。
従って稽古の心構えとしては相手を尊敬し如何に初心者と雖も無理をせず刃筋を正し可るべく対等の力を以って稽古し人も導びき己も修行するよう考うべきである。初心者にはそれなりに美点があり教えられる事が多いものである。内心我が師と看做す位の心得が有つて欲しい。下級者に対しても"ホラ、ホラ"と云うが如き態度は見苦しい限りである。
形より格に至り格より形に至ると云う事がある。
基本原則を反復練習し充分身に着ける様心掛けている内に風格を備える様になる更に工夫研究するとその人の風格から滲み出る独特の持味ある形が生まれると云う事である。換言すれば奇矯なる剣技を避け心身の正しき練磨に心掛ければ風格ある剣技が生まれると云う事であろう。
島田虎之助先生は"心正しければ剣亦正し"と云はれた相である。味はうべきである。
道は遠いが修行急がず一歩々々踏み締め倦まず弛ゆまず修行する事が肝要である。
学生生活中は又と無い好機である。悔い無き部生活を送られん事を希う。
北島辰二(中央大学学生部次長・剣道部部長)
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これは、斌徳(ふとく)二号(1965年発行)の巻頭にある北島部長(当時)の文章です。なるべく忠実にと、一字一句そのままを書き写しましたが一カ所、練磨の「磨の旧字」(だと思うのですが)を入力することができず、文脈から「今でいう『練磨』だろう」と推測させていただきました。間違っていたら大恥ですが、やむなし。この時の編集委員の数名が2月2日の優勝祝賀会に参加されますので
コッソリ、確認しようと思います。
初稽古で、剣道部の今年のスローガンが『初心』であると知った時から、この北島先生の文章を紹介したいと思っていました。
これから43年後、「斌徳」五号(2008年発行)で、古関剣友会会長(当時)は、【初心とは】というタイトルで原稿を書かれるにあたりこの文章を引用され、最後に
北島先生の流麗な剣道姿を想い起こし、私もこの年令に至り初心がここにあったならばと納得できるような気が致します。
そして
ここに学生諸君には改めて、明治の時代の大学剣道の本文を"初心"として、稽古に精進し、益々の活躍をされんことを祈念いたします。
と結ばれています。どれだけ温かい言葉であるか、私も気が付くのに時間がかかりました。
北島先生(1979年1月16日没)や古関先輩(2014年6月17日没)の境地に達してものを理解するというのは、私にはまだ何十年も先のことですが、たまたま初稽古に参加したことで、先人の文章を思い出すことができました。
監督からも「学生はいい言葉を選んでくれた」という発言がありましたが、それぞれ受け止め方は違っても、我々OBにとってもこのスローガンは、とても大切な言葉であろうと思います。
初稽古、行って良かったな。お得感がありました(笑)
そして、このホームページにアクセスしてくださる「北島世代」の大先輩たちに、学生の意気込みをお伝えすることができたなら、幸いです。
洞爺湖合宿にて 左から
故松浦先輩(39卒・和歌山商)
故北島先生(大正15卒)
河村先輩(38卒)
松川先輩(32卒)
いつの洞爺湖合宿だろう・・・
そういえば、この剣友会のホームページ名が「初心」。ご存知ですか。
高木先生の字ですが、改訂後、パソコンで見ると判読しづらく(以前から知っていればともかく)、スマホで見ると「初心」が表示されません・・・直さなくちゃ
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