中央大学剣道部をこの春ご卒業された皆さま、おめでとうございます。
平成最後、そして令和最初の優勝を飾り、二連覇を成し遂げた伝説の代として、胸を張って社会に飛び出してください。
私の社会人一年目を振り返ると、調子に乗って寿司屋のカウンターに座り「時価」と書かれた貝を目を閉じて味わっていた瞬間がピークでした。その後のお勘定で社会の恐ろしさを学びました。
せっかくなので、皆さんにも「時価」のことをお話しします。
第一に、わからないことは怖がらずに聞いてみましょう。
社会に出ると、知らないことにたくさん遭遇します。聞かなければわからないことを聞くことは恥ずかしいことではありません。時価の答えはお店の人(か、既に聞いたお客さん)しか持っていません。聞くのが正解です。
ただし、聞かなくても自分で調べたり考えたりすればわかることをすぐに聞くことはおすすめしません。自分でまずは調べて(ついでに覚える)クセをつけてみてください。
※もちろん切迫してる状況や、聞いたほうが早い場合など臨機応変に対応してください。
第二に、自分の「時価」を常に意識しましょう。
二連覇という輝かしい栄光も、卒業した今となっては過去のものです。昔の自分に甘んじることなく、いま自分がコートに出たらどんな技を繰り出せるのか、体力はどれくらい持つのか、どれくらいのスピードで動けるのか...など「いまの力=時価」を意識してください。
剣道に限った話ではありません。仕事でも家庭でも自分自身を客観的に見つめて価値を高める努力を続けてください。社会人としての力も稽古と同じです。休養は必要ですが、肝心なときにサボれば自分の力は落ちていきます。
団体二連覇を成し遂げたみなさんには、チームの時価を2年間ずっと最高に保ち続けた揺るぎない実績があります。そしてそれを成し遂げるためには、日々の凄まじい努力の積み重ねが必要なこと、さらに言えば、その努力を自分たちができることをみなさん自身が誰より知っているんじゃないでしょうか。選手も選手以外の部員も、そのサクセスストーリーを知り、自信を持って進んでいけることは大きな財産です。
少し付け足しをすると、自分の時価を考えるときは少しだけでいいので世界に目を向けてください。
これから皆さんを待ち受ける日本社会は高齢化と人口減少で未知の領域に入ります。何も手を打たなければ相対的に世界でのポジションも下がっていく可能性が高いです。日本の中だけで自分の価値をはかって安心していると、世界という広い舞台で通用しなくなってしまうかもしれません。行き詰まった時や新たなことを始めたいと思った時には、自分の市場価値が世界のどこで最大化できるのか、ブレインストーミングしてみるのも悪くないと思います。サッカー選手になるより、剣道家になるほうが世界一までの距離が近い、というのは皆さん肌感覚でわかると思います。それと同じですね。
最後になりますが、自分の価値は自分だけでは高められません。常に支えてくれている人たちに感謝をし、ぜひ行動にあらわしてください。その感謝の舞台のひとつが中大剣友会ではないでしょうか。
みなさんが卒業されて剣友会(=OB&OG会)に迎え入れられることを大変嬉しく思っています。きっとみなさんが想像している以上にOB&OGは中大剣道部を愛し、気遣い、応援しています。こっち側に来ることで、より実感できるのではないかと思います。連覇するまでもずーっとずーっと見守り、応援し続けてくれた先輩方がたくさんいます。だからこそ優勝をまるで自分のことように喜ぶのです。
これまで四年間、中大剣道部を支えてくれて本当にありがとうございました。これからは後輩たちが作っていく新たな中大剣道部を一緒に盛り上げていきましょう。
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ひょっとしてご存じない方にご紹介しておくと
平本先輩 は、経済が専門の新聞記者ですが、5年前に世界剣道選手権が日本で開催された時は特別にこのような記事を寄稿され
剣道からKENDOへ 世界大会で見せた日本の心(「日本経済新聞 電子版」にリンク)
昨年は本職の経済記事で新聞協会賞を受賞されるなど「剣友会の行動する知性」と称されています。
上記の世界大会で、同期の升田良先輩(大阪府警察)が選手として出場され、日本が優勝したことは記憶に新しいですが
・・・おや? そういえば 某有名剣道雑誌5月号 の『新人データバンク2020』に、世界大会での優勝が目標だという若者がいましたね。
ホンマ! 読んでますか?!
新人研修で苦労しつつ、キラキラした毎日を送っていると思います。あの日、二本目のコテを獲った瞬間と比較して、今の君の「時価」はいかがですか。意識すると、行動が変わるからね(故野村克也氏曰く)
卒業式がなかった卒業生に、激励の言葉をいただきました(原稿料なしで)。同期によろしく伝えてください。それから、OB稽古会で平本先輩に会ったときにお礼を言うように。
少し先になりそうだけど。
*このページのイラストは「いらすとや」さんからお借りしています。著作権は「いらすとや」さんにあります。
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